「理解」と「暗記」の関係性とバランス(公認会計士編)

学習をしていく上で,「理解」と「暗記」の関係性とバランスは永遠のテーマだと思います。また,学習している科目や試験の性質や現状の実力によっても正しいアプローチは異なります。

その上で,自分が感じている「理解」と「暗記」の関係性とバランスについて,今日は長文になりますが,説明していきたいと思います。

公認会計士試験において,1年で合格する人もいれば,合格までに5年かかってしまう人もいます。

また,途中で諦めて断念してしまう人もいます。

ではその学習効率の差は何なのか。自分はその主要因は理解度の差が大きいと思っています。

ここでいう理解度とは,純粋な知識としての理解(インプットのための理解度)だけでなく,問題の解き方の理解(アウトプットのための理解度)を含んでいますのでご注意ください。

そのため,今回は理解と定着について説明していきますので,これからの学習が少しでも効率的なる視点は取り入れていただければと思います。

1.理解とはそもそもなにか

2.理解するメリットは

3.理解を暗記の関係性とバランス

4.それでもなぜ理解は軽視され続けるのか

5.まとめ

1.理解とはそもそも何?

理解の定義は色々あると思いますが,自分が考える理解は,

「物事の構造を論理的に把握し,それを自分の言葉で説明でき,かつ,必要の応じで使える状態」

だと思います。

例えば,コーラが体に悪いというのは,結論は知っていると思います。

でも,なぜかを理解しているかと言われると全く理解できていない人が,私も含めて多いと思います。

その理由は,

(1)そもそも,人体の仕組みや栄養学の仕組みの大枠がわかっていない(全体像の理解)

(2)コーラの成分自体もわかっていない(各論の理解)

(3)両者を繋げて論理的な仕組みが納得できない(全体像と各論の理解の繋がり)

ここまでがインプットのための理解

(4)コーラを週に1回飲むのはどうか?サイダーでは?オレンジジュースでは?など日々の生活に活かすこともできない(実践で使いこなすためのアウトプットのための理解)

ということになります。

つまり,理解とは具体的には,

(1)全体像の理解

(2)具体的論点の理解

(3)全体像と各論の理解の繋がり

(4)実践で使いこなすためのアウトプットのための理解

と認識しています。

2.理解するメリットは

では,学習において理解するメリットとは何でしょうか。私が20年の指導で感じる学習における理解のメリットは,以下の通りです。

【理解することで得られるメリット】

①暗記することの時間が大幅に削減される(回転数の節約)

②ケアレスミスを大幅に削減できる(得点力の向上)

③初見の問題に対応できる

④応用問題に対応できる

⑤新しい論点の習得が圧倒的に効率化される

etc

等があります。以下では順々にその中身を見ていきましょう

①暗記することの時間が大幅に削減される(回転数の節約)

最終的にどんな試験でも,暗記していないと点数は取れないです。これは間違いない。そのため,暗記はとっても重要です。その上で,理解していないことを単純暗記してもすぐに忘れてしまいます。ロジックを理解していることは中々忘れないです。そのため,理解してから暗記した方が数倍学習効率が高まります。

まず覚えてしまえ。反復していれば理解が深まっていく!!

というアドバイスを目にすることがありますが,その通りだと思います。徐々に理解は深まっていきます。ただ,圧倒的に効率が悪いので,先に理解することがお勧めです。

②ケアレスミスをするのも実は理解不足が大きい

実はケアレスミスをする原因も理解不足が大きいです。

例えば,建物を1,000円で取得し,残存価額10%,耐用年数10年,定額法という問題文の場合,毎年の減価償却費の計算は,

1,000円×90%÷40年となります。

当たり前だと思われるかもしれませんが,(1-残存価額)をかけ忘れた,耐用年数で割るのを忘れたというミスをする方はほとんどいないと思います。

その理由はロジックを理解しているためです。

つまり,

(1)全体像の理解

 そもそも建物はなんで資産に上げるの?

 そもそも減価償却って何?なんでするの?

(2)各論の理解

 残存価額って何?なんで残存価額を引くの?

 耐用年数って何?なんで耐用年数で割るの?

(3)全体像と各論の繋がり

 取得原価から残存価額を引いた額を毎期減価償却として損益計算書に費用計上するとともに,貸借対照表の資産の額を減額するんだよね。その時に,残存価額は後で処分できるので引かないとね。その方法の一つに定額法という使用見込み年数である耐用年数に渡り,毎期均等額で減価償却を計上する方法があるんだよね。

(4)使いこなし

だから定額法の場合には,取得原価ー(1-残存価額)÷耐用年数で計算するね。

 でも,期中で取得してたらどうする? 期中で売却したらどうする?

 定率法の場合はどうする?級数法の場合はどうする?

 データが直接法で与えられていたらどうする?

 というように,実際の問題での対応の仕方までしっかりと納得できているからこそ,ケアレスミスが減っていくのです。

 逆にしっかりと理解していないで解法を覚えていると,ついうっかり,一つ処理を忘れてしまったなどということが起こりやすくなってしまいます。

 人間の脳は不思議なもので,ロジックを意識していなくても,ロジックを理解しているものについては無意識にロジックを意識しながら解けているので,ケアレスミスが圧倒的に減ると言えます。

③初見の問題に対応できる

全ての問題は同じ問題が出題されません。指示の与え方が変わったり,表現が変わったりします。その時にしっかりと理解していれば解ける確率が高まります。

もちろん,会計士試験ではない学習ではひたすら知識を暗記すればいい科目も有ります。そのため,学習方法でも,どのような科目のどのような試験についてなのかの区別は大切です。

英単語や歴史の年号などは,暗記勝負です!

④応用問題に対応できる

更に,応用的な出題のされ方をした場合にも,論点自体を理解していれば,こう解くのかなという推測が働きやすくなるので,対応力がぐっと高まります。

また,試験中に結論を忘れてしまっても,理解していればロジックに基づき結論を思い出しやすくもなります。

⑤新しい論点の習得が圧倒的に効率化される

ある論点を理解すると,同じ仕組み,似ている仕組みの論点が多々出てきます。そのような場合,理解をしながら学習を進めている人は,

あの論点と同じ考え方なんだな。

あの論点の考え方を仕えるな。

といった感じて,新しい論点を効率的に習得していけます。

3.理解と定着の関係性

では理解と定着の関係性とバランスはどうするのが望ましいのでしょうか。

最終的には定着をしていないと点数は取れないので,定着はとても重要ですが,上述した理解のメリットが大きいので,まずはできる限り理解し,その後徹底的に定着する。そして定着をしながらじわじわ理解を強化するがいいと思います。

またバランスで気を付けておきたいのが,その場合,双方のレベルをある程度バランスよく高めることがお勧めということです。

理解と定着がそれぞれレベル100まであって,掛算の合計レベルが5,000で合格レベルの実力になると仮定します。

理解レベル50 暗記レベル100

理解レベル70 暗記レベル72

理解レベル100 暗記レベル50

で合格レベル5,000に到達することになりますが,

現状が理解レベル40 暗記レベル80だった場合には,暗記のレベルを100まで高めても総合の実力が4,000で限界になってしまいます。

また,理解のレベル50暗記のレベル80の人も,徹底的に覚えても総合の実力が5,000が限界になってしまいます。

そのため,ある程度反復したのにも関わらず成績が伸び悩んでいる人は,暗記重視の対策から,理解重視の対策に比重を変えることがお勧めです。
その結果,理解のレベルを70ぐらいにもっていき,暗記のレベルも80~90ぐらいにもっていく方が総合の実力が5,600~6,300になるので安全です。

もちろん,理解のレベル80暗記のレベル50のように明らかに学習量が不足している人については,徹底的な定着でいいですが,ある程度学習量をこなしている人は暗記のレベルが低いよりは,理解のレベルが低いことが原因になっている(中々暗記できない,覚えてもすぐ忘れてしまうのも理解不足)ので,注意が必要です。

そのため,大切なことは,理解を効率的に習得できる講義と教材を使ってまずは理解を強化すること。その上で問題演習を通じてアウトプットまでの理解を習得すること。

その後徹底的に反復し定着を図りながら,答案練習で適時現状をチェックし,理解の強化や定着の強化の改善をし続けるイメージです。


ただ,理解の強化も効率的に点数を取ることが目的です。そのため,重要性の低い論点,難解な論点,テストで出題される可能性がない論点などまで理解することは不効率ですので,重要論点の理解の強化を心掛けてほしいと思います。


4.それでもなぜ理解は軽視され続けるのか

ここまで,理解を強化した方が効率的になることを説明してきましたが,世の中にはなぜ暗記すればいいというアドバイスが多いのでしょうか。その理由をいくつか説明してきます。

① 暗記すれば大丈夫な科目も多い

② 講師や上位合格者が無意識で理解していることも多い

③ 暗記すればいいという指導の方が手間が少ない

④ 暗記の方がわかりやすい

①暗記すれば大丈夫な科目も多い

今までの人生の経験で,論点の構造が複雑でない科目の学習の成功体験があげられます。

英語の単語,歴史の年号や名称,運転免許のテスト,法律科目の択一式の学習など,暗記さえすれば乗り越えれる試験も多い。そのような成功体験があるので,暗記すれば何とかなると思ってしまいやすいのです。

しかし,会計士試験のような実務の構造を理解する必要がある科目については,理解しないと中々乗り越えられない(企業法や租税法などの法律科目を除く)ものが多いのですが,他の学習の勉強方法と混同されてしまっていると言えます。

また,企業法の論文対策や租税法もロジックを理解した方が圧倒的に効率的に学習できますので理解がお勧めです。

② 講師や上位合格者が無意識で理解していることも多い

講師や上位合格者の中には,講義を受講すれば自動的に理解ができ,あとは反復していれば自動的に成績が伸びた方が多くいらっしゃいます。そのような方は,理解が弱い状態のイメージが少ないし,反復さえしていれば点数が伸びると誤解をしている可能性があります。

しかし,講師や上位合格者に,その暗記した論点の理解を説明してと質問すると,しっかり説明できることが多いです。つまり,無意識でも理解をしているので,成績が効率的に伸びているということが言えます。

③ 暗記すればいいという指導の方が手間が少ない

指導する側からすると,徹底的に覚え込みなさい。成績が伸びないのは反復が足りないからだと指導する方が正直楽です。体育会の部活でとりあえず走りまくれとアドバイスするのと同じです。結果が出ないのは努力が足りないから,量が足りないからと指導し,全員に一定の量をやってもらえれば,自動的に上位者は理解も強化されるため,指導する側としては手間が少なくて済むという側面がある。

しかし,体育会の例でも,瞬発力を高めたいのであれば,どのような練習メニューがベストか,持久力を高めたいのであればどのような練習メニューがベスト化は異なります。闇雲に量をやるのはかなりリスクがあります。

特に社会人受験生の方や,短期合格を目指す方はしっかり理解をすることが必須です。

実際に,社会人で合格をされている方や短期で合格されている方は,意識してか無意識化は置いておいて,皆さん理解度が高い傾向があります。

また,理論科目と計算科目も配点は理論部分の方が高いにも関わらず計算科目を重視するのも,計算科目の方が大量の問題を配ってあとは反復しなさいという指導がしやすいという側面もあると思う。理論科目でしっかりと点数を取れるようにするには,理解をしっかりと促し,様々な視点を指導していかないと難しいとも言える。

さらに,理解の強化を指導しようとすると多くの質問が来ることになる。徹底的な個別フォローの体制を整えないと,中々理解の強化を促すことは難しいという側面もある。

そのため,計算科目でも理論科目でもとりあえず反復して暗記しようという指導になりやすいのです。

ただ,それが効率的な学習とは逆の動きで,どちらかというと量でカバーし力技で合格レベルにもっていく方法に近いと感じます。

④暗記の方がわかりやすい

人は,わかりやすいものの方が取り組みやすいという性質を持っている。そのため,理解と暗記でいえば暗記の方が圧倒的にわかりやすいし,やるべきことが明確になる。そのため,つい暗記に走ってしまいがちだが,暗記に走る前に,自分が目指している試験に合格するために,本当に今の状態から暗記の強化だけで合格できるのかはしっかりと判断していきたい。

また,反復を繰り返していると,一度やった問題は全部解けるようになります。そのため,目の前の問題集が解けるようになっているので安心してしまい,このままで大丈夫と誤解をしてしまいます。
そして,いざ本番の試験で初見の問題で中々点数が伸びないというリスクが高まってしまうリスクが高まる点には注意が必要です。

5.まとめ

最後に,ポイントをまとめると

・理解と暗記はどちらも重要

・最後は暗記しないと点数は取れない

・合格可能性を高めるためには,理解のレベルを一定以上に上げる必要がある

・理解した方が学習は圧倒的に効率的になる

・暗記した後で理解が強化されることもOKだが,多すぎると不効率

そのため,我々講師は,できる限り理解を効率的にできる様に教材を作成し,講義を行うことが重要となります。さらに,疑問点についてはいつでも質問できるフォロー体制が大きな影響を与えます。
最後は一人ひとりがしっかり反復することが欠かせないが,反復回数を減らせるようにしていく,本試験での対応力を身に付けてもらう支援は本当に大切だと実感しています。

そのため,

とりあえず覚えろ!
点数が伸びないのは反復が足りないからだ!
理解ができなくてもいいからまずは反復していれば後で自然に理解ができる!

などというアドバイスではなく,

正しい理解の仕方を伝えたいし,
暗記の重要性も伝えていきたいですね!

そのためにも,今後もいつでも質問・相談できる体制も維持・強化していきたいと思っています!

もちろん,今回のブログの内容は,私が感じるものですので,絶対に正しいことを述べているなどという気もないですし,すべての人に当てはまるなどとも一切思っていないです。

ただ,効率的に学習した方が合格の可能性が高まると信じてますし,まだまだ暗記偏重の学習を行っている人が多いと感じていますので,もう一度,自分の理解のレベルと向き合い,理解を強化するべきかどうかを検討してもいいと思います。

皆さんの学習が少しでも効率的になることを祈っています!

もしよければ,以下のブログも是非参考にしてみてください!

効率的な学習戦略&学習方法(公認会計士試験編)

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