昨今,オリンパス事件,大王製紙事件と,世間を騒がせる問題が起こっている。
そのため,不正会計に対応するためにという趣旨で,5月30日金融庁が監査部会による会合を始めている。
それについて,詳しくはこちら
↓
http://www.atmarkit.co.jp/news/201205/30/kansa.html
より不正を発見できるように監査基準を見直すことを念頭に議論が行われている。
私は,日本の監査制度を考えた場合に,いくら監査基準を改訂しても根本的な解決にはならないと思っている。
形式をいくら変更しても,それを行う当事者の意識改革を行わなければ,実質的な改善策にならない。
経営者側の意識改革と公認会計士側の意識改革の両方が求められていると思う。
まず,経営者側の意識改革
本来,経営者は,適正な財務諸表を開示することで,資本市場からの資本調達を行っている。つまり,上場企業は,適正な財務諸表を開示することこそ,自らの企業の発展のために必要不可欠なのである。
その前提は,株主の存在がある。
株主は,適正な財務諸表の開示の前提に,投資対象を選定し,投資を行う。
また,所有と経営の分離により,適正な財務諸表の開示の前提に,会社の状況を把握することになる。
そのため,経営者は,自社を投資対象に選んでいただくために,
株主に,適切に経営状況を報告するために,
適正な情報開示を行う必要がある。
この大前提が,わが国では,形骸化している。
日本は,メインバンクからの間接金融,株式の持ち合い,デイトレーダーのような物言わぬ個人株主等により,本当の意味での株主が少ない(近年は外資系の株主が増えてきてはいますが)。
そのため,経営者が,株主に対して適切な情報開示をしていこうという気が起こらないし,そういう価値観も醸成されていない。
欧米では,株主が,コストをかけて監査を実施し,適正な財務諸表を開示してほしいと思っている。
日本の株主は,そのような意識が弱いのが現状。
だからこそ,経営者も監査に非協力的であったり,監査報酬をいかに下げるか,経理・財務の人員をできる限り少なくといった,状況に陥ってしまう。
また,粉飾決算に対する罪の意識も弱いと思う。
粉飾決算は,少し言い過ぎになるかもしれないが,巨額詐欺事件である。
大企業にもなれば,投資家に何千億円という損失が生じる可能性がある。
仮に,何千億円を詐欺で集めた人がいれば,大罪人として,批判を浴び,罪を償わなければいけない。
しかし,実際問題,粉飾決算を行う経営者に,そこまでの罪の意識がないのが現状であると思う。
きっとばれないだろうと自らの保身のために手をそめてしまう。
だからこそ,粉飾決算は重罪であるという意識を持つように,意識改革しなければいけない。
そのためには,粉飾決算の厳罰化と経営者に就任した時に,その事実を知るような書面に署名してもらうこと等をすれば,ずいぶんと経営者の方の意識も変わるのではないか。
次に,我々公認会計士側の意識改革
我々公認会計士は,高度な専門家として,財務諸表を監査し,不正を見逃さずに,適正な財務諸表を開示することを担保することを期待されている。
しかし,現状は,いかに無限定適正意見を出すかということ,自分の所属事務所のリスクを回避すること,クライアントを失わないこと等が優先され,問題企業を正し,証券市場を支えるという意識が弱いように思う。
大王製紙事件もオリンパス事件も,担当会計士は問題点を認識できていたと思う。
何かあやしいなと。
その時に,徹底的に調査するという職業専門家としての意識が弱くなっている気がする。
危ないなと思ったら,調査するのではなく,契約解除では問題は解決しない。
だからこそ,公認会計士自体が,専門家としての誇りを持ち,不正会計を絶対に見逃さないという意識を強く持つことが求められている気がする。
そのためには,監査報酬を引き上げることが必要。
欧米の50%程度と言われる監査報酬で,国際水準の監査を行うことは到底できない。
もっと,人員をさき,徹底的に監査する。そして,数字に表れてくる不自然さを察知する力を養うことが求められていると思う。
オリンパスの事件にしても,世の中がバブル崩壊後にあれだけ株式評価損が出ている全体から見て,評価損が対して生じていない事実は,どう見ても不自然ではなかったか。
単に外部証拠があったのでOKではなく,その不自然さに気付かなければいけないという意識。
もっと最新基準や世の中の動向を勉強し,数字を読み取る力を養う。
組織再編は等の最新基準はよくわかりません,ファンドの仕組みは良くわかりませんではいけないと思う。
そして,そのために,監査報酬をあげるのだから,不正を見逃したときには,訴訟リスクを伴うという覚悟がなければいけないと思う。
これは,職業専門家として,高額な報酬をもらうのであれば,当然の責務である。
もちろん,共謀したというのであれば,経営者とともに厳罰化である。
つまり,両者の意識改革なしに,形式的に監査基準を変えても解決策にはならないかなと。
また,投資家もコストは負担するので,しっかりと監査をしなさいという意識を持つこと。
そのコストを負担するのが嫌な企業は,上場してはいけないと思う。
このような,日本固有の間違った価値観を正していく意識改革に本気で取り組んでもらいたいと強く思う。
公認会計士協会も理事選を当番制で,組織票で選挙を行っているようでは,
今の日本の政治と同じ。
理事選に出る方は,この業界を将来どうしていきたいのかというビジョンをマニュフェストとして掲げ,
そのうえで,ガチンコで選挙すればいいと思う。
40代の理事長がいてもいい。欧米では,40代のリーダーは沢山いる。
日本では,60代70代のリーダーばかりである。
もっと,20年後,30年後のこの業界のことを真剣に考え,そのために人生をかけるという志を持って,
理事・理事長に就任してもらいたいと思う。
良かったらぽちっと押してください!