日本の高等教育において、大きな問題の一つに、
大学生が勉強しないということが挙げられます。
ある調査では、
アメリカの大学生の平均勉強時間は、1日7.6時間
日本の大学生の平均勉強時間は、1日1.8時間と
推計されていました。
では、なぜ日本の大学生と世界の大学生はこんなにも差があるのでしょうか。今日は、日本の大学生が勉強しない理由という視点から、述べてみたいと思います。
1.環境を求め続ける日本人
まず、日本の大学生の大きな特徴として、安定した環境を求めているという問題があります。例えば一流企業に就職したい、資格を取得したい、語学の勉強をしたい、すべての目標がいかに安定した環境を手に入れるかという視点になってしまっています。
これは、日本が終身雇用・年功序列という特殊な雇用形態を長年継続し、それがうまく機能していたことに起因しています。
一流企業に就職することが目的なので、面接でどうアピールにつながるかという視点になってしまいます。また、公務員が人気なのも安定した環境を求めている最たる例だと思います。
この環境を求める人の大きなリスクは、環境が変化したとたんにリスクが顕在化することです。一流企業に就職したとしても、その会社の業績が悪化した場合や、倒産した場合には、非常に大きなリスクに直面します。従来は数十年成長し続ける企業が多かったので、そのような思考で問題なかったのですが、今後はどの企業も変化が激しくなるので、一流企業に就職しても安定を手に入れることは難しい時代です。
また、公務員にしても、現在も解雇がないので、安定しているという認識を持たれていますが、今後財政がますます悪化する中で、待遇は悪くなる一途だと思います。さらには、仮将来解雇が可能になった場合には、公務員のキャリアほど、民間企業では活かしづらいものもないので、相当大きなリスクを負うことになります。
対して、欧米の大学生がなぜ多くの勉強時間を行うかというと、提供できる価値に意識を置いているからです。高度な専門知識や思考力を養うことで、社会に出た後にどのような価値を提供できるのかという意識が強いので、高等教育で必死にみんな勉強をするのです。
これは、終身雇用、年功序列ではなく、成果主義・実力主義の考え方が浸透していることが大きく影響しています。
日本人も、今後安定した環境などないということに気づくと思います。本当の安定は高い価値を出せるようになることで、どんな環境になっても価値を出せる人が安定を手に入れているという認識に変わると思います。
ですので、10年後には、日本の大学生も一日7時間や8時間の勉強をするようになると思います。
2.知識の重要性を疎かにする日本人
次に、日本人は知識の重要性を疎かにし始めています。大学生が学ばない、読書をしないのは、知識の習得の重要性をおろそかにする価値観が広まってきているからです。
最近では、創造力・プレゼン力・論理的思考力・コミュニケーション能力・協調性など言われていますが、日本人のそれらの知識が他の先進国に比較して劣っているかというとそんなことはないと思います。創造力やプレゼン力は多少劣っているかもしれませんが、論理的思考力・コミュニケーション能力・協調性などは日本の方が高いぐらいではないでしょうか。
そして、創造力も・論理的思考力も、知識がなければ思考が浅すぎてほとんど使い物になりません。
幅広い知識や、深い見識があってこそ、初めて創造性や論理的思考力も威力を発揮する性質も多分にあります。
専門知識しかり、教養しかり、日本人が大きく劣っているのは、大学受験まで習得できない分野の知識が本当に欠落しています。
経済学・歴史の表面的以外での知識、社会学、政治学、哲学、経営学、など、ビジネスマンとして、人として、必要な知識が本当に浅いものになっているのが、日本の大学生の特徴の一つだと思います。
これは、向上心のある学生でも、知識の習得よりも行動を優先してしまう。学生起業家や学生団体を立ち上げたりしてアクティブに活動するのはいいが、並行して知識のインプットをしないと、どんどん浅い人間になってしまう恐れがあります。
社会人生活は、とても長いです。焦って学生生活からアクションをとりまくるよりも、まずは、徹底的に知識をインプットするのが、学生時代のメリットでもあります。
なので、アクションをすること自体を否定する気は全くありませんが、もう少し知識を徹底的に詰め込む重要性を意識してもいいのかなと思います。
3.大学受験の弊害
上記のような知識を軽視する原因の一つに大学受験があると思います。大学受験で数学や歴史・英語など徹底的に詰め込みます。これが、知識を詰め込む重要性を下げていると思います。
まず、詰め込む知識に大きな問題があります。数式を表面的に暗記する、歴史を表面的に学ぶ、テストで高得点を取るための英語を詰め込む。この大学受験までの経験から、知識を詰め込んでも受験以外にはあまり役に立たないなという印象を与えている可能性があります。
また、受験により燃え尽き症候群になっているので、大学生になって高度な専門知識や教養を学ぼうという意欲さえ起らないという側面もあると思います。
本当は、歴史でも、年号や事象を表面的に暗記するのではなく、明治維新であれば、江戸幕府という地方分権型の組織から、明治維新という中央集権型の官僚組織になった理由、なぜ黒船は来航したいのかという当時の世界情勢など、様々な背後の論理や社会の仕組みを学ぶことで、意味のある学習になると思います。それを単に、年号や事象の名称を徹底的に暗記することに終始することがいけないと思っています。
その結果、高等教育で学ぶべき深い教養や専門知識を学ばないまま、社会に飛び出していくので、価値を出すという意味での知識が大きく欠落しているのが、現状でもあります。
4.大学教授の弊害
社会でバリューを出すためという意識が学生に欠落している大きな要素は、家庭でそのようなことを親からなかなか言われないのもそうですが、大学でもなかなか教えてくれる教授がいないことも起因していると思います。その理由が、大学の教授が社会に出ていないで、大学という狭い社会でのみ生きている方が多いので、社会でバリューを出すことの重要性や、そのために必要なことを学生に語れないのです。
もちろんそうではない教授も沢山いますが、多くの教授が実社会の経験が少ないというのは事実ではないでしょうか。
その点、アメリカの大学では、実社会での経験が十分な教授の割合が多いので、学生に対してもバリューを出すためには何が必要か、ということを説得力をもって話せる状況があると思っています。
そのことが、学生の学ぶ意欲を阻害している点にも留意しないといけないと思います。
私が知っている教授にも、本当に魅力的な授業を展開している教授も多くいらっしゃいますが、どんな授業をしていても首にならない教授の評価システムにも大きな問題があります。
以上、色々話してきましたが、日本の大学生が勉強しない理由は、バリューを出せるようにすることが必要という意識の欠落と、様々な環境から、高等教育時代に知識を習得する重要性を感じていないことが相俟って生じていると思います。
しかし、その結果、これからの社会で日本の国際競争力はますます低下していくので、どのタイミングからは分かりませんが、欧米の大学生並に勉強する時代が訪れるはずです。
そのため、今の大学生世代の方に伝えたいのは、そのような時代が来る可能性が高いので、そういう後輩たちに負けないようにしていかないといけないという事実です。ですので、自分のために、将来のキャリアを考え、必要な知識を積極的にインプットしてほしいなと思います。
勉強に集中できるのは、学生の特権なのですから!!
東京CPA会計学院の通信講座の申込や教材の購入は,CPAオンライン校から!!
『公認会計士のお仕事と正体がよーくわかる本』
公認会計士に関する勉強方法や合格後の各キャリアの魅力など,色々書いていますので,勉強中の方も,これから学習を検討している方も,
是非読んでもらえればと思います。
公認会計士のキャリアに役立つ情報やイベント情報は下記の若手CPAコミュニティのサイトをご覧ください!
以下のブログランキングに参加していますので,
ブログの内容が参考になりましたら、下記のボタンを,ぽちっとお願いします。
SECRET: 0
PASS:
いつもBlogを拝読している会計士受験生です。
短答式試験を無事終えて、論文式試験に向けて勉強し始めているのですが、最近急にあることに不安を感じ始めました。
それは合格できた後、働くことに対してです。ここ2年程バイトもせず、働くという感覚を忘れてしまっていることが原因なのかなと思います。また、これから何年も働いていくということが想像できない、ということも本音として正直あります。
そこで質問させていただきたいのですが、社会人として自立して働いていく上で意識すべきことや、今現在やるべきことは何だと思いますか、ご回答よろしくお願いします。
SECRET: 0
PASS:
>受験生さん
とても大切な質問ありがとうございます。
重要な内容かつ、他の方にも貴重な質問なので、本日ブログのほうで書かせていただきます。
少しでも参考にしてもらえれば幸いです。
SECRET: 0
PASS:
>国見健介さん
ありがとうございます、よろしくお願いします。