消費税が10%に上がり、軽減税率が導入される方向で議論が進んでいます。
でも、自分は消費税の軽減税率導入には、『強く』『強く』反対です。
その理由は、軽減税率を導入することで、益々富裕層優遇になると認識しているからです。
今日は、なぜ、軽減税率導入が富裕層優遇になると感じているのかについて、書いてみたいと思います。
消費税自体の仕組みは、以下の東京CPA会計ブログの記事を参考にしてください。
『税率の引き上げ間近!消費税と軽減税率の仕組みを解説!』
http://blog.cpa-net.jp/consumption-tax.html
1.財政問題から考える税制の方向性
そもそも論として、税金の話をするときには財政の問題を必ずセットで考えないといけないです。税収と社会保険料の合計が、各種公共サービスにおける支出と均衡しないといけないというのが国家財政の原則です。
日本は、現時点でもプライマリーバランスが毎年20兆円程度赤字であり、今後ますます高齢化社会に伴い社会保障費が増大していくので、どうやって財政の均衡を図りつつ、社会保障の持続可能性を確保していくかが最重要課題とも言えます。
その大きな方向性としては、経済全体のパイを大きくするというのが現実的ですが(社会保障を大幅に削減という選択肢もありますが)、そのためには、国内に回るお金の総量を大きくしなければいけません。
そして、日本国民が海外に移住したり、日本企業がどんどん海外に拠点を動かすことは、財政上大きなマイナスですし、逆に、外国の企業がどんどん日本に拠点を置きたいと思うようにしなければいけません。
その点では、所得税や法人税を引き下げ、日本国民だけでなく、外国人に対しても日本市場は魅力的ですよという環境を整えることは不可欠だと思います。
今の資本主義の方向性を踏襲するのであれば、経済全体のパイを増やさないことには財政均衡は実現できないといえます。
2.消費税は公平に課税できる
上記の様に所得税・法人税率を引き下げつつ、税収の拡大を目指す時に、一番公平に課税できるのが消費税です。消費税は、高齢者からも、外国人労働者からも、観光客からも課税できるのです。
もちろん、高齢者の中にも多くの経済的弱者もいますが、高齢者の中には富裕層も多くいます。そのため、より余裕のある人から多くの税金を集める、外国人からも税金を集めるためには消費税というのが一番やりやすいのです。
特に富裕層の高齢者は所得税を納めなくてよく、さらに年金まで受給できるので、彼らにも公平に負担してもらうには、
消費税を増税することが一番効果的です。
諸外国を見ても、法人税や所得税は引き下げる動きとともに、消費税の税率は10%~30%程度に設定されていることからも、消費税を徴収するのが世界の潮流とも言えます。
日本の財政を考えると、社会保障費の大幅な削減などを実施しないのであれば、消費税は30%以上必要だと思います。
3.なぜ軽減税率が富裕層対策になってしまうのか
上記の状況で消費税を徴収するのはいいとして、それでも軽減税率も同時に導入した方がいいという考え方もできます。その論拠の一つが、消費税の逆進性です。これは、所得の低い人ほど税負担が重くなるという論拠に基づいて主張されます。
確かに、経済的弱者と富裕層が同じ金額だけを食費に使うのであればそうですが、実際は、確実に富裕層の方が食費に多くのお金を使っています。そのため、軽減税率を導入すればするほど、富裕層の方が得をしてしまうと言えます。また、軽減税率を導入すれば富裕層の高齢者や外国人からの税収も大きく減ってしまいます。
さらに、軽減税率を導入すると税収が4,000億円~1兆円程度減ると言われています。
この分の財源は、必ず何かの負担が生じてしまいますので、結局経済的弱者につけが回るとも言えます。
そうであるならば、軽減税率など導入せずに、一旦全員から消費税は払ってもらう。これで富裕層も、裕福な高齢者も外国人も多くの消費税を支払うので、その一部を経済的弱者に他の方法で分配する仕組みを設計する方がトータルの税収は高く、かつ経済的弱者の支援もできると言えます。
4.経済的弱者対策はシンプルに制度設計する
一定の格差は必要だと思っていますが、経済的弱者に対する支援は不可欠です。特に子供の貧困は本人には何の責任もないですので、必ず支援した方がいいと思っています。
その時に、軽減税率などの様々な方法で支援するのではなく、制度はできる限りシンプルにして、現金給付なのか、低所得者層の所得税をゼロにするのか、生活保護の支給水準を高くするのか、大学教育までを無償にするのか、などの方法はさておき、シンプルな制度設計により、支援する方が効率もいいですし、実質的に経済的弱者を支えることになると思います。
5.軽減税率導入は新たな利権を生むだけ
それにもかかわらずなぜ多くの政党が経済的弱者救済のために軽減税率は不可欠と主張するのでしょうか。それはまず一つに、本当は富裕層ほど得をする軽減税率なので、軽減税率を主張すれば、富裕層も基本的には反対しません。かつ、よく仕組みを理解できていない経済的弱者に対しては、あなたたちのために軽減税率を絶対に導入しますという建前で、指示を得て、選挙の投票や献金・お布施などのお金を集めやすくなるというメリットがあるからではないでしょうか。
普段経済的弱者のために頑張ると言っている政党が、軽減税率に賛成している状況などを見ると、本当にしたたかだなと感じてしまいます。
また、制度を複雑にすればするほど、そのルールを決定する権力者に利権が生じます。例えば、新聞を軽減税率の対象にするというために、新聞業界から多額の政治献金が発生したりします。
ルールを多くすればするほど、そこで得をする人、損をする人の関係も複雑になり、そこに新たな利権が発生するので、結果としてルールを決定できる権力者にお金が集まる仕組みになってしまいます。その結果、お金のある、献金できる人により有利なルールになりやすい仕組みが出来上がってしまうのです。
6.海外で導入されている軽減税率は目的が異なる
海外の多くの国で軽減税率が導入されていると言われることもありますが、海外で軽減税率が導入されたのは、経済的弱者対策ではなく、以前の税制との整合性を図るためという趣旨が一般的です。また、近年では軽減税率のマイナスが言われることも多く、近年消費税を導入する国では軽減税率を導入せずに単一の税率を採用する国が多いという現状もあります。
7.軽減税率導入のコストこそ社会的弱者の配分に使うべき
さらに、軽減税率を導入すると、中小企業には相当な事務負担が発生します。日本全国でのそのコストは数千億円など膨大な金額になると言われています。その分のコストは必ず製品の販売価格に上乗せされるか、人件費の削減として結局は経済的弱者の負担になります。
まあ、色々書きましたが、軽減税率を導入した場合、最終的に得をするのは富裕層と政治家などの権力者です。そしてそのツケはすべて経済的弱者に降りかかってくる可能性があります。だからこそ、軽減税率の導入以外の方法で、もっとシンプルに経済的弱者を支援する方がいいと思うため、軽減税率の導入には反対という考えを持っています。
自分の認識が誤っているかもしれませんが、是非皆さんも、軽減税率導入の可否について考えてみてください!