公認会計士 企業法の学習方法!!

公認会計士の各科目の学習方法シリーズですが、

今回は、東京CPA会計学院 企業法主任講師の菅沼講師に説明していただきました。
かなり詳細に書かれていますので、是非、企業法の学習計画の参考にしてほしいと思います。

以前に書いた簿記と財務諸表論は下記の記事を参照してください。

公認会計士財務会計論計算(簿記)の学習方法!!

公認会計士試験 12月短答後の簿記の学習方法アドバイス!

公認会計士財務会計論理論(財務諸表論)の学習方法!!

公認会計士試験 12月短答後の財務理論(財務諸表論)の学習アドバイス

 

以下は、菅沼講師からの文章

論文式試験対策と短答式試験対策に分けて述べていきますが,論文式試験対策の(5)注意点については,理解という点で短答式試験対策にも同様のことが言えます。したがって,短答式試験対策に関する箇所だけを読まれる方も,1.論文式試験対策について (5)注意点の中の① 条文の内容と趣旨を理解しようとする場面までを読むようにしてほしいと思います。

ちょっと長いですが,それぞれの対策を具体的に書きましたので,企業法の勉強方法について悩んでいる方,しっくりこない方は,是非最後まで読んで頂ければと思います。

 

 

1.論文式試験対策について

(1) 論文式試験で問われる内容

短答式試験においては,主に条文の正誤問題,すなわち,結論として合っているか否かだけが問われます。

しかし,論文式試験においては,受験生には参考法令基準集が配布されるので,条文の結論は配布された基準集を見ればわかるわけです。

では,論文式試験では何が問われるのでしょうか。論文式試験においては,① 制度の全体像を理解しているか,② 条文や制度が設定されている趣旨,③ 論点(明文規定がなく問題となる点)の理解,④ 問題で問われている条文が配布された基準集から正確にピックアップすることができるか等が問われます。

 

(2) 長文の記述が求められる

企業法は,他の科目と違って,長文の記述が求められるため,答案構成について学ぶ必要があります。答案構成とは,何をどのような順番で書くかということです。答案構成は問題のタイプ別に違ってきます。答案構成については,論文対策集の学習を通じて学んでいくことになります。

 

(3) 論文式試験における出題論点

企業法において,論文式試験で重点的に出題される網掛け部分とされている範囲は,会社法と金融商品取引法です。すなわち,商法だけが,重点的に出題される範囲から除外されています。

平成17年に成立した会社法が試験範囲となった平成18年以降,論文式試験においては,以下のような範囲から出題されています。

菅沼①

 

 

見てわかるように,機関に関する問題が継続的に出題されています。したがって,機関の重要性が最も高いといえるのですが,頻出する「株式」,「資金調達」,過去3年間出題されていない「組織再編行為等」,過去4年間出題されていない「株式会社の計算等」については,出題可能性が高いものとして,しっかりとした対策が必要です。

 

その他,出題可能性が高いわけではない論点についても,企業法については出題された場合に大問1問(50点分)に影響が出てしまうことから,企業法にあまり時間が割けない受験生であっても,全く触れないという対策はおすすめできません。

 

まず,「持分会社」は,平成14年に出題されたのが最後です。会社法が施行された平成18年以降も出題されていないため,そろそろ出題されてもおかしくはありません。特に,合同会社は平成17年に成立した会社法によって新しく創設された会社の種類ですので,特徴を理解しておく必要があります。

 

次に,「会社法総則」ですが,名板貸人の責任,会社の使用人,事業譲渡に関する義務や責任については確認しておいてください。

 

そして,直近で出題された「設立」についてですが,設立の範囲は一度出題された場合は,次に出題されるまで一定期間,間が空く傾向があります。最低でも2年間,長いと7年くらいは間が空くのですが,前述した通り出題された場合は,大問1問分に影響が出てしまうことから,この傾向がずっと続くと信じこんで全く対策をしないのはリスクがあるでしょう。

また,平成26年改正法によって,出資の履行を仮装した場合の責任が定められたことから,見せ金に関する論点は注意してほしいと思います。

 

「金融商品取引法」については,未だ論文式試験で出題された実績はありません。大問1問,50点分が金融商品取引法から出題されることはちょっと考えにくいですが,資金調達や組織再編行為等との関連で,有価証券の募集・売出し,公開買付制度・大量保有報告制度,民事責任等が問われる可能性はあります。CPAのテキストでは,短答と論文に分けてすべて重要性が付されておりますので,企業法に時間を多く割くことができる方は,論文の重要性が高い箇所について確認しておくことをおすすめいたします。

 

 

(4) 使用する講義・教材

理解が弱い部分については,全15回で全範囲を説明する圧縮講義を受講することをおすすめします。そのうえで,論文対策集とテキストを反復していきます。あわせて,上級答練,直前答練,論文式模擬試験を受験して,アウトプットの対策も十分に行いましょう。

論文対策集は,問題とその解答例が掲載されており,主に答案構成や答案作成上の注意点,典型的な問題に対する論証例を学習することが目的です。これに対して,テキストは,論点や条文・制度が網羅的に掲載されており,正しい知識を網羅的に習得することを目的とします。

 

テキストと論文対策集の学習の割合ですが,答案構成や答案作成上の注意点についてイメージができていない最初の段階では,テキスト:論文対策集=1:2くらいの割合で学習することをおすすめします。その後は,基本的にテキスト:論文対策集=1:1の学習で良いでしょう。

 

ここで注意してほしいのは,あくまで条文・論点についての正しい知識を網羅的に学習するためには,テキストを学習しなければならないということです。論文対策集の学習だけに集中をして,テキストの学習を怠らないよう,注意してください。

 

 

(5) 注意点

論点や条文の内容・趣旨について,理解ではなく,文言を暗記することで対応しようとする方がいますが,丸暗記では覚える量に限界がありますので,範囲の広い公認会計士試験に対応することは難しいです。また,理解をしていない場合は,出題の意図や問題文の指示に対応することも難しいので,論点を外して記述してしまうことがしばしば起こります。

 

ざっくりとした方向性が合っていれば細かい箇所が多少間違っていても,それなりの点数がきます。したがって,まず大事なのは,一つひとつの論点や制度の大枠の理解を優先しておさえることです。

つまり,簡単に言えばこういうことだよね,ざっくり言えば,結論はこうで理由はこういうことだよね。ということを『自分の言葉で人に説明できる』ようにしておけば,論文式試験で怖いものはありません。

 

ただ,理解という言葉が抽象的なので,人によってどこまで理解することを目指しているかというレベル感は異なります。もちろん,目指すレベル感は公認会計士試験に合格するレベル以上が求められるわけですが,どこまで理解すればいいのかというレベル感がわかりにくいため,「理解したつもり」になってしまっている方が非常に多いと感じます。

 

そこで,本質的な理解をするためにも,論点や条文について『自分の言葉で人に説明できるか』を意識してほしいのですが,その際の説明のレベル感について具体的に説明していきましょう。

 

条文の内容と趣旨を理解しようとする場面

まず,条文の内容と趣旨を理解するために,その説明をする場面を想定してみましょう。

例えば,ある会社法の規定を学習する際,その規定の趣旨が「会社債権者の保護」だとします。

そのとき,「この規定の趣旨は会社債権者の保護です」という説明では不十分です。

会社法は,会社を取り巻く利害関係者(会社・株主・債権者等々)の保護を図るために様々な規定を設けています。

すなわち,会社法には,「○○○の保護」を趣旨とする規定が多数存在するわけです。その規定が誰を保護するものなのかということを,まずおさえることは大事ですが,それではまだ理解の程度としては不十分なのです。

では,どうすれば十分な理解となるのでしょうか。十分な理解をするためには,以下の2点を意識して学習するようにして下さい。

 

(ⅰ) なぜその場面で○○○を保護する必要があるのか

(ⅱ) その規定があることによってどのように○○○が保護されるのか

 

以上の2点を意識することによって,より本質的な理解をすることができます。

 

もう少し具体的にいきましょう。

例えば,資本金制度の趣旨は会社債権者の保護ですが,上記2点を意識すると以下のような説明となります。

 

(ⅰ) なぜその場面で債権者を保護する必要があるのか

株主の責任は間接有限責任なので,債権者にとってはその債権を回収する際に当てとなるのは会社財産しかない。したがって,債権者のために会社財産を確保する制度が必要となる。

 

(ⅱ) その規定があることによってどのように債権者が保護されるのか

そこで,資本金制度を設けることによって,債権者は会社財産について株主に対する優先的な地位を有することとなり,債権者が保護される。

 

ここまで説明できるように意識すると「説明するレベル感」,つまり理解するレベルとしては十分です。

 

 

論点を理解しようとする場面

次に,論点を理解しようとする場面を想定してみましょう。

論点を理解するために最も重要なのは,何が問題となっているのか,つまり,問題の所在をしっかりと捉えることです。何が問題となっているのかが曖昧なままその論点に対する結論と理由を考えても非常に不効率になってしまいます。したがって,論点を十分に理解するためには,何が問題となっているのかということを説明できるようにする必要があるのですが,その際には,以下の2点を意識するようにして下さい。

 

 

(ⅰ) 問題になっている行為は何か(具体例と共に)
(ⅱ) 結論が確定することによって法律関係はどうなるのか

 

法律関係とは,法律によって規律された人と人との関係です。わかりやすくいえば,登場人物の権利義務の関係はどうなっているかということです(誰が誰に対してどういう内容の権利を有しているか,誰が誰に対してどういう内容の義務を負うかということです)。

 

もう少し具体的にいきましょう。

例えば,代表取締役の代表権濫用行為の効力について理解する場合を想定しましょう。この場合,上記2点を意識すると以下のような説明となります。

 

(ⅰ) 問題になっている行為は何か(具体例と共に)

代表権濫用行為とは,代表取締役が代表権の範囲内で,会社の利益のためではなく,自分や第三者の利益のために第三者と取引をする行為です。つまり,客観的には代表権の範囲内の行為ですが,代表取締役の主観としては自分の利益を図ろうとして代表行為をする事例です。

具体例は,自分の借金の返済のために,代表取締役が株式会社を代表して銀行から金銭を借り入れる場合です。

 

(ⅱ) 結論が確定することによって法律関係はどうなるのか

代表権濫用行為の効力が有効となった場合は,代表取締役が会社を代表して行った行為が有効に成立し,法律効果が生じます。つまり,金銭消費貸借契約であれば,借主は返済義務を負うことになるのです。すなわち,結論が有効であるならば,銀行は,会社に対して貸したお金の返済を請求することができます。

これに対して,代表権濫用行為の効力が無効となった場合は,金銭消費貸借契約は成立していないため何ら法律効果は生じません。すなわち,結論が無効であるならば,会社は何ら義務を負わないため,銀行は会社に対して返済を請求することができないわけです。

 

 

この2点を意識して論点を捉えることができれば,後は簡単です。

代表権濫用行為の効力に関する論点には,判例があります。

 

【判例の見解】

 

(結論)

代表権濫用行為の効力は,原則として有効だが,相手方が悪意または有過失であるならば,民法93条ただし書を類推適用して無効

 

(原則有効である理由)

代表権濫用行為は客観的には代表権の範囲内の行為であるため,取引の安全を図る必要がある

 

(例外的に無効とする理由

株式会社のためにするという表示と自己または第三者のためにするという意思との間に不一致があるため,心裡留保に類似している

 

 

何が問題となっているかをしっかり捉えることができれば,以上の結論と理由も頭に入りやすくなります。後は一般的な感覚で考えればいいのです。

 

・ 「あの契約は会社の運転資金じゃなくて実は代表取締役が自分の借金返済のために借りた物なので,当社は返済しません」という会社の主張がまかり通るのであれば,銀行に不測の損害が生じますので,取引の安全を図るために原則有効とすべきだな

 

・ 銀行が代表取締役の意図を知っていた場合や,不注意によって知らなかった場合は,保護する必要がないため,無効とすべきだな

 

このように,何が問題となっているのかが明確になっていれば,自然と上の2点を導くことができるはずです。つまり,「民法93条ただし書を類推適用」,「相手方は悪意または有過失」,「心裡留保」,「表示と意思に不一致がある」という最低限のキーワードをおさえておけば,文章の暗記をしなくても流れをおさえるだけで,自分の言葉で記述することができます。

 

 

さらに,論点について何が問題となっているのかを正確に捉えていれば,論点を間違って記述する論点外し(例えば,代表権濫用行為の事例なのに,利益相反取引について記述することなど)のリスクも無くなるのです。

 

 

2.短答式試験対策について

(1) 短答式試験で問われる内容と出題論点

短答式試験においては,主に条文の正誤問題,すなわち,結論として合っているか否かが問われます。また,最高裁判所の判例についても出題される可能性がありますが,近年の傾向ですと,出題されても,1,2肢,多くても1問分ですので,条文の内容の学習に重点を置くようにしましょう。

 

問題数について,平成25年試験までは20問で実施されていましたが,平成26年試験と平成27年試験は18問に変更されました。しかし,前回の平成28年第Ⅰ回短答式試験においては,再び20問へ変更されています。

 

問題数に関係なく,商法から2問,機関から5~6問,金融商品取引法2問が出題されております。したがって,この3つの範囲から約50点分が出題されるということです。

その他,特徴的な点を挙げていくと,近年の傾向として問題数に関係なく,株式からの出題数が1~2問と少ないと言えます。しかし,平成25年試験以前は平均して約3問出題されていましたので,今後出題数が増えることも十分考えられます。

また,資金調達の範囲からは,社債が12回(6年)連続で出題されているというのも特徴的です。

 

(2) 使用する講義・教材

理解が弱い部分につきましては,圧縮講義を受講することをおすすめします。そのうえで,短答対策問題集とテキストを反復していきます。あわせて,短答直前答練,短答式模擬試験を受験して,本番形式でどの程度点数が取れる状態なのかを日々確認しましょう。

 

短答対策問題集は,短答問題が一問一答形式で掲載されており,重要性の高い典型問題,短答式試験において注意しなければならないひっかけポイントや各制度の比較の視点等を学習することが目的です。これに対して,テキストは,条文の内容や論点が網羅的に掲載されており,正しい知識を網羅的に習得することを目的とします。

 

まず,短答対策問題集を2回転してから,テキストを読み込みましょう。

その理由ですが,条文の内容がどのように問題で問われるか,どういう点に注意しなければならないのかがわからない状態でテキストを読んでも,ただ文章を読んでいるだけになってしまい,問題に対応することができる知識を吸収することが難しいためです。

したがって,まず,短答対策問題集を2回転し,ひっかけポイント等の出題される視点を網羅的に学習し,その視点を踏まえてテキストを読み込むようにしましょう。

 

また,短答対策問題集は,短答式試験までにもう1回転し,全部で3回転したうえで,本番に臨むようにしましょう。

 

(3) 注意点

短答対策問題集を解く際の注意点

短答対策問題集を解く際は,何を目的に解いているのかを大事にしましょう。具体的には,「短答式試験当日において,類似の問題が出題された際に正しく正誤判断ができること」を目指してほしいと思います。そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれませんが,知らぬうちに「短答対策問題集を解くこと」が目的となってしまっている方が非常に多いと感じます。こうなってしまうと,短答対策問題集とほとんど同じ問題で構成されている答練であっても点数が伸びにくいという状況に陥ってしまいます。

反復すればなんとかなるという意識ではなく,しっかりとした目的を持って短答対策問題集に取り組む必要があるわけです。

確かに,ある教材を反復することは知識を定着させるために非常に重要で欠かせないプロセスなのですが,正しく正誤判断できるようになることを目標にしたうえでの反復でないといくら反復をしても同じ問題や似たような問題を繰り返し間違う,つまり,なかなか点数が伸びないという状態が続いてしまいます。

 

また,短答対策問題集を解く際に,「その場で正しく正誤判断できたか」に重点を置いてしまっている方も非常に多いですが,短答対策問題集の構造は,一問一答形式なので,左のページに問題,右のページに解答解説が載っています。つまり,右を見れば答えが載っていますし,そもそも,「正しい」,「誤り」の2択なので, 適当に「何か正しそうだな」,「何か間違ってそうだな」という感じで右を見ても確率的に半分は当たります。また,講義を受けた後やテキストを読んだ後だと,さらに,その内容が頭に残っている状態になるので,正答率は,適当にやっても,7・8割と高くなることでしょう。この時に,「その場で正しく正誤判断できたか」に重点を置いてしまうと,曖昧なおさえになっているにも関わらず,短答式試験当日でも正しく正誤判断できる状態になったと誤解してしまいます。

その場では間違ってもいいんです。極論,全部間違っても,二度と間違わないようなおさえこみがその場でできればいいわけです。大事なのは,「短答式試験当日において,正誤判断できる力を身につけること」ということを忘れないで,短答対策問題集に取り組むことが重要です。

 

 

テキストを読み込む際の注意点

テキストを読み込む際は,その条文の内容が問題でどう出題されるのかを意識するようにしましょう。つまり,「この知識が問題でこういう風に問われるな」ということをイメージしながらテキストを読むということです。この意識を持つことで,実際に出題された際もテキストの内容が頭に浮かびやすくなります。

 

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