SNSで、とある受験生の方から、以下のご質問をいただいた。
財務の計算で減価償却の月割を忘れてしまったり、貸借を逆に書いてしまったりと簡単な間違いをしてしまい、点数を落としてしまいます。
こういったミスをしないためには普段から何を意識すればいいのでしょうか?
このようなミスは、一般的にケアレスミスと呼ばれていると思います。
そして、どんな学習や試験でも、ケアレスミスを少なくしたいという想いは、世界共通の悩みだと思います。
そのため、今回は、ケアレスミスを減らす方法について、想うことを述べたいと思います。
1.ケアレスミスの具体例
簿記を例にとるとケアレスミスの具体例としては以下のようなものが挙げられます。
・月割計算、年割計算を間違えた
・問題文の指示を読み落とした
・原則法、例外法に判断を誤った
・その他典型的なひっかけ論点に引っかかった
・集計するべき金額を見落とした
・電卓のたたきミス
etc そして、それらの共通項は、後で解答解説を見れば、知らなかった論点などではなく、あ、そうだったとすぐに気づく論点がほとんどだと思います。
特に短答式本試験などでは、ケアレスミスをしても8点失ってしまうため、直前期になればなるほど、以下にケアレスミスを減らすかということに意識が行くものの、なかなか減らないという方も多いと思います。
しかし、適切な対策をすれば、90%のケアレスミスはなくせると思います。
つまり、本当のケアレスミスはごく一部で、その他は準備不足に起因している、つまり対策可能と言えます。
では、どのようにすれば、そのような対策可能なケアレスミスを減らすことができるのでしょうか。
以下では、代表的なケアレスミスの原因別に、対策を説明していきます。
2.典型的なひっかけ論点に引っかかってしまうケース
月割年割を忘れる、資本金計上額や繰延資産の計上の可否などの原則規定を忘れている、流動資産の金額を聞かれている際の一年以内に償還予定の満期保有目的の債券など典型的な引っ掛け論点に引っかかってしまう理由は、アウトプットのための知識の定着不足に起因しています。
つまり、問題でどのような引っ掛けが出てくるので、この点に注意して問題を解かなければいけないという注意点の定着が弱いことが原因になっています。
例えば、金融商品会計であれば、
・売買目的有価証券は償却原価法を適用しない
・その他有価証券、満期保有目的債券の一年以内償還予定は流動資産に計上
・子会社株式、関連会社株式は時価評価しない
・減損適用後は、減損適用後の帳簿価額に対して時価評価
株式会社会計であれば、
・出資の際に、資本金は特に指示がなければ原則規定で全額計上
・準備金の積み立ての1/4規定
・繰延資産は原則全額費用処理
・設立に際しての株式交付費は創立費に含める
・自己株式の関連費用は営業外損益
・自己新株予約権の取得費用は取得原価に参入
などの典型的な引っ掛け論点があります。
上記のような典型的な引っ掛けポイントについては、各論点ごとに、典型的な引っ掛け論点をしっかりと把握し、問題文を読みながらどの引っ掛け論点が出ているのかなという視点で読んでいけるレベルにするだけで、相当ケアレスミスをひらすことができます。
このひっかけポイントを押える時間は、時間はかからないので、テキストを読むときに強く意識する、問題集や答案練習で引っかかった時に、テキストにしっかりと印をつけるなどの作業を行うことで対策が可能です。
全論点アウトプットのための定着を徹底するだけでも、3割以上のケアレスミスは減らせると思います。
3.理解が不足していることによるケアレスミス
上記のようなひっかけポイント(アウトプットのためのインプット)を徹底的に習得するという対策はイメージがつきやすいと思います。そして、もう一つケアレスミスの大きな原因になっているのが、理解が不足しているから間違えてしまうというケアレスミスです。
例えば、有形固定資産の減価償却、無形固定資産・繰延資産の償却の月割計算を間違えてしまうという事例であれば、上記のひっかけポイントという捉え方もできると思います。ただ、単に月割計算をするんだと暗記をしていると、つい忘れてしまいがちになります。
そもそも名で月割計算をするのかというイメージを正確につかみ、問題を解くときにもそのイメージを無意識にイメージしていることが大切になります。
つまり、使用する期間に基づき期間按分して費用計上することにより、適切な期間損益計算を行うので、当然に月割計算をしないと適切な金額を計上できないというイメージを正確に持っておくことで、問題文を読みながら、この論点は月割計算が必要だなと必然的に意識できるようになります。
また、有形固定資産の減損処理などもその費用配分の方法を変化させるものに過ぎないので、当期末の減価償却を適用後に減損処理を行い、翌期の減価償却から減損処理後の未償却残高を償却するというイメージをつけることで、ミスが少なくなると思います。
また、管理会計の各種差異を売上原価に賦課するという論点も、損益計算書には実際原価を計上したい。だから予定原価や標準原価で製品勘定に集計している場合には、最後に各種差異を賦課して実際原価に修正しないといけないというイメージを正確に持つこと。
そして、不利差異は実際原価が多いので、賦課により原価を加算していくというイメージを持つことで、賦課を忘れる、貸借を逆にしてしまうということなどはなくなると思います。
このように、各論点の意味、簿記で言うのであれば、会計処理の意味を理解することでも、かなりのケアレスミスを事前に防ぐことができます。
4.検算ポイントを多く持つ
例えば、総記法や分記法の検算、退職給付会計の検算などの典型的な検算可能な論点は検算を毎回するだけでミスが減らせます。
プラス、今後の問題に大きく影響する数値は解きながら2度計算し、検算する癖を持つ。原価差異などの論点は、差異の総額をさっと出しておき、各差異を算定した後に総額とずれていないかをさっと検算するなどの、様々な論点で間接的に検算できたりします。
そのような検算ポイントをより多く持って置き、テスト中にここを間違えたら痛いという判断をしたときには、一回検算をし、解答を見る前に、間違いを発見できる実力も大事です。
ただ、この方法は、応用的な力が必要なので、余裕があった場合のみ実践すればいいと思います。
5.焦ってしまうことによるミスの悪循環
上記、点綴的な引っ掛けポイントをしっかりと定着させる。それぞれの処理の意味を正確にイメージするという対策で、ケアレスミスの7割以上は減らせると思います。
その上で、もう一つ大切なのが、基本的な問題の精度を高めることで、試験時間に焦ることを少なくするというポイントがあります。
それは、上記の3つの対策をしっかりすることに加え、基本的論点の精度を高めるということです。基本的論点の精度を高めることにより、半分ぐらいの問題を解くスピードが圧倒的に早くなります。
その状態になると、取らなければいけない問題を焦って間違えたり、問題文を焦って読んで指示を読み落とすことも減ります。焦ってミスをするということも結構生じているので、処理速度を上げることで焦らなくて済むようになる効果は比較的高いです。
また、プラスの効果として、その場で考える応用問題に対してじっくり取り組める余裕も生まれます。
6.最後に
上記のような対策をすることでケアレスミスは減らせます。だからこそ、本当はケアレスミスではないとも言えるのです。そして、最後に、自習中の問題演習や答案練習を本気で解くということを付け加えておきます。
人の記憶は、感情が大きく動いた時により強固になります。
過去のことでも、とてもうれしかったことや、悔しかったことというのはしっかりと覚えていると思います。
そのため、問題を解いた時に、ケアレスミスしてとても悔しい気持ちになることが、同じミスをしないためには有効です。
そのため、本気で問題を解く。練習だからと言って間違えていても気にしないということを少なくすることをお薦めします。
以上が、ケアレスミスを少なくするアドバイスになります。
簡単に対策ができるものから、多少時間をかけていかないと効果が出づらいものもありますので、今の実力や残りの学習時間と勘案して、効果の高そうなものから取り入れてもらえれば幸いです!
まとめると
1.引っ掛けポイントをしっかりと把握し、問題文を読みながらすぐに気づけるレベルに持っていく
2.理解をすることで、ミスを少なくする
3.検算ポイントを一つでも多く持つ。重要な箇所は試験中に二度計算する。
4.基本論点の定着を高め、処理速度を早くすることで焦る必要を少なくする
5.間違えた時に悔しいという気持ちを強く持つ
などを意識してほしいと思います。
そして、本当の実力者もケアレスミスはゼロにはできません。なので完璧を目指す必要は全くありません。
人間なので、ミスはつきものです。
でも、実力者程、ケアレスミスを少なくできているという事実は大切にしてほしいと思います。