本日、6月24日に公認会計士試験5月の短答式本試験の結果が発表されました。
願書提出者数 6,331人
受験者数 4,740人
合格者数 638人
合格点 66%
という結果になりました。
合格されたみなさん、本当におめでとうございます!
上記結果から、
1.今後の展望について
2.今回の難易度について
3.12月の短答の難易度
4.公認会計士試験を続けるかどうかで悩んだ場合
について、色々想うことを述べていきたいと思います。
1.今後の展望について
今年の短答式合格者は、12月が863人、5月が638人と合計1,501人でした。また、論文受験者は3,021人となります。
昨年度の試験は、12月が883人、5月が624人と合計1,507人でした。また論文受験者は2,956人でした。
つまり今年は、論文受験者をあえて、増加させてきました。仮に今回のボーダーを67%にしていた場合に、5月の合格者が579人、論文受験者が2,962人と昨年と同程度であったことを考えると、金融庁は、敢えて1%ボーダーを下げて、論文式受験者を増やしたと推測できます。
これは、今年の論文合格者を昨年の1,030人から、1,050名程度に微増させることを予感させます。
合格者の質を維持するため、論文式の合格率10%強を保ちながら、受験者の増加分は合格者を増やしていくという意思を感じます。
平成28年度の公認会計士試験の受験者数は、今年は昨年度とほぼ横ばいでした。ただ、12月までは減少し、5月から増加に転じましたので、来年29年以降は徐々に増加していくことが予想されます。そのため、来年度は、11,000名程度の願書提出者になるのではないでしょうか。
この場合、昨今の売り手市場も勘案すると、平成29年度の論文合格者を1,100名程度にする可能性が高いと思います。その場合は、短答合格者を150名程度は増やさないといけないので、来年の短答合格者は1,600名程度になるのではないかと予想します。
そのため、受験者数の微増分は、合格者の微増に繋がるので合格率は今年度と同程度が続くと予想します。
2.今回の難易度について
今回は、合格点が66%という結果になりました。平均点または科目別平均点は下記の通りです。
( )内は12月との比較
全体平均点 46.0%(−1.7%)
科目別平均点
財務会計論 43.8%(−6.1%)
管理会計論 48.0%(+2.1%)
監査論 48.4%(+2.0%)
企業法 45.9%(-1.5%)
そのため、難易度が易しかったという意見もあると思いますが、今の試験としては、ごくごく平均的な難易度であったと理解してもらえればと思います。
(もちろん数年前に比べれば相当易しくなっています)
そのため、科目ごとの合格点も結果としては、
財務会計論 130点程度
管理会計論 70点程度
監査論 65点程度
企業法 65~70点程度
程度が目安であったと言えるのではないでしょうか。
正しい学習計画を立案するためには、可能な限り理想ラインに到達する学習を行いつつ、実際の合格ラインも正確に把握しておいてほしいと思います。
今年は、合格ボーダーを66%~68%で、本命67%と予想していたので、翌日の予想としては、まあ当たったと言えるので、一安心しています。ただ、合格ボーダーは、試験の翌日に最初の発表をしているので、多少ずれてしまう年もあるのが事実です。
その上で、まだ情報が少ない試験翌日の段階で、ある程度の正しい方向性を示すことがより大切と思い、毎年ボーダーを公表していますので、その辺はご理解ください。
個人的には、受験生一人ひとりが、正しい情報に基づき意思決定できることがとても重要だと思っています。また、教える講師側の立場としては、試験の難易度とボーダーを正確に予想できることは、本試験の合格レベルと、受講生のレベルを正確に把握していることの裏返しであり、日々の学習のアドバイスにおいて、目標点数とそれに達するための適切にアドバイスするためのベースの感覚だと思っています。
そのため、今後も、皆さんに役立つ情報を提供するためにも、教育者として正しい感覚を研ぎ澄ますためにも、できる限り正確なボーダー予想を発信していくように努めますが、外してしまう年もありますので、その辺は、ご勘弁くださいね。
3.12月の短答の難易度
次回12月の難易度はどうなるのでしょうか。監査審査会としては、基本的に70%をボーダーの原則としているので、70%を目指したいと思っていると思います。ただ、その上で65%~70%程度を毎回着地点にしてきています。
そのため、65%~70%程度をボーダーとする場合には、全科目を総合すれば、今回と大きな変化はないのではないかと思います。同程度の難易度でボーダーを67%程度にしてくるか、少し難易度を下げて、ボーダーを70%にしてくるのかはわかりません。
ただ、今回の難易度の問題で75%程度獲得できる実力を養成することは短答式合格の可能性をかなり高めることに繋がるので、12月の短答式を目指される方は、是非、まずは8月末をめどに計算力の強化を図りつつ、12月の本試験までには理論科目の精度も高めることを意識して学習に取り組んでほしいと思います。
今回残念な結果になってしまった方は、すぐに気持ちの切り替えをすることが難しいと思います。ただ、12月の合格の可能性を高めるためにも、学習を継続すると決断ている方は、早期に気持ちを切り替えて学習に向かってほしいと思います。
4.公認会計士を続けるかどうかを悩んだ場合
そして、最後に、公認会計士の学習を継続するかどうかを悩んでいる方にメッセージを伝えたいと思います。
公認会計士の学習をしている方の中には、
このまま公認会計士を目指し続けるのかどうか悩む方も多いと思います。
短答式試験で不合格になった時、
日々の学習でなかなか成果が出ない時、
そういう時には、
このまま勉強しても合格できないのではないか。
自分にはそもそも向いていないのではないか。
自分のやりたいことは他にあるのではないか。
そういう気持ちになることも沢山あると思います。
一度きりの人生なので、大きな意思決定は自分自身でしっかりと納得して決断するものだと思います。
その上で、少しでも参考になればと思い、自分が普段みなさんに相談された場合に伝えていることを説明してみます。
(1)他に本気で取り組みたいことが明確にある場合
自分が公認会計士をやめることに賛成するケースとしては、他に本気で取り組みたいことが明確にあり、それに本気で取り組みたいと本人が考えている場合です。そのような場合には、今すぐその道に方向転換し、その道で全力で頑張ってほしいと思っています。
(2)他に本気で取り組みたいことがない場合
他に本気で取り組みたいことがない場合には、基本的には継続することを進めています。その方が長い人生で見てば、大きく成長できるし、充実できると思っているためです。
上記のように思うのは、以下のような理由のためです。
① どの道でも困難は伴う
どの道でも困難なことはあるので、単に困難という理由で方向転換をすると、どの道でも壁にぶつかっては方向 転換を繰り返すことに鳴ってしまう恐れがある。
② 得意になるからこそ、好きになることも多い
やりたいことや好きなことって、原体験で決まることもあるけど、ある道を追求した結果、どんどん得意になり、当初見えていなかったやりがいがどんどん見えてくることもある。何にも本気で取り組まない結果、自分のやりたいことが一生見つからない人の方が大部分だと感じたりもします。なので、どの分野でも一流になればやりがいが持て、好きになれるという視点も大事にしてほしいと思います。
③ 逃げるいいわけを考えないことが大切
本音が単に逃げたいという結論が先にあり、その気持ちを正当化させるために色々な理由を後付してしまうのが人間でもあると思っています。その結果、後付した理由に納得して、別の道に進むことを納得させようとする。そういうことが必要な時もあるのが人生ですが、自分の本音は何かという問いも同じぐらい大事にしてほしいと思います。
④止めても何にも本気で取り組まなくなる可能性が高い
何かをやめた結果、何にも取り組まず、なんとなく過ごしてしまうリスクも高いです。そうならないためには色々走りながらも考え、次の目標が決まったら思い切って方向転換する方がお勧めです。だからこそ、他に取り組みたいことが明確でないのであれば、まずは、目の前の目標をクリアしていくことに集中する方がいいことが多いと感じます。
⑤負け癖をつけないことも大事
何事も自分を信じる自信は大切です。そのためには色々な成功体験の積み重ねも大事になります。そして、あの時できたから、今度の壁もきっとできるという根拠のない自信も人生意外と大事です。
逆に、何かに挫折してしまうと、それがトラウマになり、色々チャレンジすることにちゅうちょしてしまうことも出てきます。もちろん、切り替えて次のチャレンジに進む方もいますが。
ですので、負け癖をつけないためにも、一度始めたチャレンジを最後までやりきるという視点も大事になります。そこは、自分のやりたいことの方向性との兼ね合いで選んでいくしかないかなと思います。
(3)本当につらい場合
上記では継続する重要性を述べてきました。
その上で、どうしても勉強に真剣に取り組む意欲が出ない、精神的に限界がきているのであれば、他の選択肢に進むことも正解だと思っています。本当につらくて、勉強に向き合いたくないという精神状態まで追い詰められているのであれば、一度勉強から離れ、じっくり考えてみることも一つの選択肢です。
すべてから解放されて、自分が何をしたいのか。公認会計士になりたいのか。別の道を進みたいのか。
そこは、自分の本音と向き合って判断することだと思っています。
会計士は当然魅力的な選択肢だと思っていますが、人生にはその他の選択肢も沢山あります。
なので、追い込みすぎても良くないです。
その上で、個人的には、やりたいことがほかにあるのであればその道を全力で進むべきだし、他にやりたいことがないのであれば、公認会計士を継続して、合格しきるところまでしっかりとやり抜く方がいいと思っています。
また、公認会計士試験は、正しい学習方法と正しい量をやれば、多くの方が合格を勝ち取れる試験であると信じています。
ですので、公認会計士に合格したいと想う方は、是非あきらめずに合格を勝ち取ってほしいと思います。
現時点でも、公認会計士を続けるのか、止めるのか悩んでいる人も多いと思いますので、少しでも参考にしてもらえればと思います。