公認会計士試験の学習中の方からモチベーションの高め方を相談されることが多くあります。
また、公認会計士の試験に限らず、何かにチャレンジする場合にはモチベーションの維持で悩む場合も多いと思います。
そのため、今日は、モチベーションの仕組みと高め方について、自分なりの私見を説明してみようと思います。
1.モチベーションの差の大きさに驚いた経験
自分は、公認会計士の受験指導を17年ほど行っていますが、教育に関わり始めた当初に一番びっくりしたことが、モチベーションにはこんなにも個人差があるという事実でした。
自分が勉強していた時は、正直あまりモチベーションについて考えていませんでした。
その理由は、自分がやって結果を出せばいい環境であったのと、
自分自身があまりモチベーションについて悩んだことがなかったからだと感じています。
でも、公認会計士を目指す人を指導するようになり、常にモチベーション高く勉強に取り組む方と、どんどんモチベーションが低下していく方の差の大きさに、何で人はこんなにモチベーションに差があるのかとびっくりしました。
2.モチベーション・動機の仕組み
上記のように、モチベーションの個人差の大きさに衝撃を受けたので、その後数年は、人はなぜこんなにモチベーションの差があるのか、どうすればモチベーションが高く維持されるのか、モチベーションが下がる要因は何なのかなど、色々本を読んだり、生徒さんと相談を繰り返してきました。
その結果、現時点では自分なりにモチベーションの仕組みに対しての見解が出来上がっています。
それは、
モチベーションは、『それを達成するための手間・苦労』と『それを達成した時に得られるメリット』の大小関係でほとんど決まっているという法則です。
つまり、
『それを達成するための手間・苦労』 < 『それを達成した時に得られるメリット』
の状態であれば、モチベーションは高く維持されるが、
『それを達成するための手間・苦労』 > 『それを達成した時に得られるメリット』
の状態になってしまうと、モチベーションの維持が難しくなり、どんどん低下してしまうということです。
上記の仕組みのイメージとしては、変な例えになってしまいますが、
今から100キロ走ろうと提案されたら、ほとんどの人はモチベーションなど上がらないと思います。
100キロ走る手間・苦労が大きいのに、ほとんどメリットがないためです。
対して、100キロ走ったら一人1億円プレゼントと言われれば、みんなノリノリで100キロ走るし、1億円手に入ったら何しようかなど会話しながら走り切ってしまうのではないでしょうか。
当たり前ですが、100キロ走る手間・苦労よりも手に入るメリットが大きいのでモチベーションが下がるわけがないという状況です。
これはメリットが、わかりやすすぎる例ですが、多くのことに対するモチベーションの仕組みは上記例と同じで、メリットと手間・苦労の関係で決まっていると思います。
何かを得たいから頑張る場合だけでなく、何か痛み・苦痛から逃れたいから頑張る場合も同じ仕組みが作用していると思っています。
3.モチベーションになぜ大きな個人差が出るのか
上記がモチベーションの仕組みだと理解していますが、なぜモチベーションに大きな差が出るのでしょうか。
その一番の原因は、
その目標の達成のための手間・苦労はみな同じように認識しているが、その目標の達成した場合のメリットの認識に個人差がとても多きいことが原因だと考えています。
例えば、手間が10のものに対して、メリットを2しか感じない人と、メリットを20感じる人ではモチベーションに大きな差が出ます。
では、人はメリットをどう感じているのでしょうか。
公認会計士試験の学習で言えば、全員が感じているメリットが、合格後に手に入る外部的な要因を上げられます。
・経済的な報酬
・社会的なステイタス
・安定
・専門知識を活かした多様なキャリアプラン
などが一般的だと思います。
このような合格した後に手に入る外部的な要因もとても重要なメリットの一つですが、それだけをモチベーションにしている場合には、モチベーションの維持が難しくなることがあります。
外部的な環境のみをメリットとしてとらえていると、例えば、
・カリキュラムから遅れてしまった
・答案練習で点数が伸び悩む
など、合格できるのか不安になってくると、合格後に手に入るメリットが手に入らないかもという感情が出てきます。
その場合は、自分が数年学習した時間の手間と苦労がすべて無駄になるのかという感覚になりがちです。
そうなってしまうと、日々の勉強に向かい意欲が次第に減退していく恐れが高まります。
では、どうすればそのような事態を回避できるのか。
一つは、スタートダッシュからしっかりと学習し、順調に学習を進めることで合格に不安を井田カナックていい状態にするという方法があります。この場合は、合格後に得られる外部的要因のみのモチベーションでも乗り越えれる可能性が高まります。
しかし、公認会計士のような長期間の学習を要する目標で、一度も合格に不安を抱かないで学習できる方などほとんどいないと思いますので、その方法だけに頼るのはリスクがあります。
そのため、解決策として、合格後に得れる外部的要因だけでなく、
その過程で自分の実力が高まっているという視点をメリットとして考えることがとても重要です。
公認会計士試験という目標に向かって進んでいる過程で、
・論理的思考力
・計画立案力
・課題発見力
・課題解決力
・修正力
・優先順位の設定力
・時間管理能力
・忍耐力
・俯瞰力
など、全ての事項で結果を出すために重要アンソフトスキルが一つひとつ高まっているという認識自体をメリットとして考えれることはとっても重要です。
その場合は、モチベーションポイントが、合格という点の成果ではなく、合格はもちろん、様々な実力が高まっているという複数の視点になるので、メリットをより多く感じることができ、モチベーションの維持が容易になります。
もっと、実力をつけたい、もっと成長したいという想い自体が強烈なモチベーションになっていくイメージです。
4.実力を高めることの重要性を認識する
次に、なぜ実力を高めることが大きなメリットになるのかを認識する必要があります。実は、大学受験に合格する、公認会計士試験に合格する、一流企業に就職するなどの点の成果よりも、実力を高めていることこそが重要と思っています。
これは、最終的に成果は実力に正比例する性質があるからです。
以前、サッカー日本代表の本田選手が、ワールドカップで大活躍した時に、空港で大歓迎を受けた時のコメントが私の印象には強く残っています。
彼は、『どんなにもてはやされようとも、明日からまた地道に練習に取り組むだけです』
という趣旨のコメントをしていました。
このコメントの意味は、今回たまたまワールドカップで結果を出せたので賞賛されていますが、結果が出せていなかったら多くの批判を受けています。なので、結果や他社の評価に一喜一憂するのではなく、自分の実力を高め続けることこそ大切だという趣旨でした。
実力を高めていれば、長期的に結果はついてくる。なので、明日から練習するだけですと。
これは本当に大切なことを示していると思います。
長い人生、うまくいかないことが何度もあります。
・受験に失敗した
・恋愛に失敗した
・会計士受験に失敗した
・就活に失敗した
・重要なプロジャクトで失敗した
そのような時に自暴自棄になり、新たなチャレンジを止めてしまうと、成長自体の機会を逃してしまいます。
結果を出してきた先人の多くは、数多くの挫折を繰り返しながらも、前を向き進み続けたからこそ、失敗も沢山したけど、その過程で成長し、結果として多くの成功も手にしてきたんだと思います。
だからこそ、点の成果の失敗に一喜一憂するのではなく、上手くいかない時でも、次には絶対にうまくいくように改善してやるという意気込みで前を向いて進んでいくことが重要だと思います。
そして、実力を高めると、苦労と手間は同じでも、得られるものがどんどん大きくなるというメリットがあります。
レベル1の時は、レベル1の課題に苦戦します。
レベル30の時はレベル30の課題に苦戦します。
この辺は人生もロールプレイングゲームと同じだと思います。
そのため、自分のレベルを上げればあげるほど、同じ苦労と手までどんどん大きな課題を解決できるようになるので、結果をして多くの成果を手に入れることができると思います。
私も、公認会計士の受験生時代と、今で、どちらが大変で忙しいかというと、多分今の方が忙しいと思います。でも、今の忙しさは、結果として多くの成果を手にできるので、受験生時代の何倍も楽しいですし、もっと成長したい、もっと成果を出したいと感じられます。
この、同じ手間・苦労で得られるものがどんどん大きくなることこそ、自分が成長する大きなメリットだと思います。
5.分業のメリットも認識する
さらに、成長すれば成長するほど分業のメリットも大きくなります。
例えば、法律の専門家と会計の専門家がいたとします。
法律の専門家が3時間考えてもわからない会計事象について、会計の専門家であれば5分で解決できることも多いと思います。
逆に会計の専門家が3時間考えてもわからない法律事象について、法律の専門家であれば5分で解決できることも多いはずです。
この時に、お互いが協力しないと、お互い3時間と5分ずつ時間を費やしてしまいますが、お互いが協力して分業し合うことで、お互い5分と5分、お互いが10分ずつの時間を費やすだけで解決できるようになります。
これが分業のメリットであり、マーケティングの専門家、コミュニケーションの専門家、戦略立案の専門家、ブランディングの専門家、ITの専門家など、様々な分野の方と分業するメリットは非常に大きい理由です。
この分業のメリットで大事な視点は、
自分のレベルと同じレベルの他の分野の専門家としか分業ができないという法則です。
どうしても人間関係はギブ&テイクの関係が成立しないと長続きしないので、自分が他の専門家に提供できる価値と同程度の価値しか、自分も提供してもらえないことになります。
そのため、自分がレベル1だと他の分野のレベル1の人としか分業できないですが、
自分がレベル30だと、他の分野のレベル30の人と分業できるようになるので、分業のメリットもどんどん高まります。
このあたりの法則が、実力を高めることで得られるものがどんどん多くなることの大きな要因だと思います。
6.まとめ
長くなりましたが、最後にまとめると、結局モチベーションは、メリットをどれだけ多く感じているかに起因しています。そのため、その目標を達成した時に得られるメリットだけでなく、その目標に向かってひたむきに進み続ける過程で自分自身の実力が大きく高まっているという視点をたくさん持つことで、壁にぶつかってもこれも成長するために必要なプロセスだと認識でき、モチベーションの維持が容易になります。
どんどんチャンレンジをしながら、沢山失敗を繰り返し、それでもモチベーション高く進み続けている人は、このようなメリットを沢山認識して、モチベーションを維持しているのです。
ですので、もし、モチベーションの維持で悩んでいる方がいれば、今感じているメリットよりも後10個プラスでメリットを認識することで、モチベーションが大きく高まると思います。
是非、たくさんのメリットを感じて、自分の実力を高めるために、ご自身の目標達成に向かって、進んでほしいです!!
1月17日の朝日新聞の38面を読みましたか。
僕は泣きそうになりました。